エリクソンの発達心理学から考える
ハラスメント個別研修で「相手の受け止め方」を理解するということ

問題となった言動だけを見ても、
本質が見えないことがあります 

ハラスメント個別研修では、問題となった発言や態度だけを切り取っても、十分な改善につながらないことがあります。なぜなら、同じような場面で同じような言動を繰り返す方には、その人なりの受け止め方、対人関係の癖、長年の価値観が背景にあることが少なくないからです。

 

たとえば、「厳しく言うのは相手のため」「これくらい普通」「自分もそうされてきた」といった考え方は、単なる言い訳として片づけられない場合があります。そこには、その人がこれまでの人生や職業経験の中で身につけてきた、対人関係のスタイルや自己理解のあり方が影響していることがあります。

 

そうした背景を理解する手がかりの一つが、
エリクソンの発達心理学です

エリク・エリクソンは、人の発達は子ども時代で終わるものではなく、成人期以降も続くと考えました。エリクソンの心理社会的発達理論では、人は生涯を通じていくつかの発達課題に向き合いながら、他者との関係、仕事、社会とのつながりの中で成長していくとされています。成人期も発達の途上にあるというこの視点は、職場で起こる人間関係の問題や、行動改善の支援を考えるうえでも大きな示唆を与えてくれます。

成人期にも「乗り越えるべき課題」がある

エリクソン理論では、成人期の主な課題として、親密性, 世代性, 統合性が示されています。親密性は、他者と信頼ある関係を築く力。世代性は、次の世代や周囲の人の成長に建設的に関わる力。統合性は、自分の人生や歩みを振り返り、受け止める力です。 

 

また、成人期の発達においては、仕事・人間関係・コミュニティへの関わりが重要であるとされており、こうした関わりが健全に機能することが、その後の安定や成熟につながると考えられています。逆に、こうした課題がうまく整理されないままになると、停滞感や閉塞感、対人関係の偏りとして表れることがあります。

職場で起こる問題は、「発達課題」と無関係ではありません

職場では、管理職、教員、ベテラン職員など、立場や経験のある方ほど、周囲への影響力が大きくなります。本来であれば、その影響力は部下育成や後進支援といった前向きなかたちで生かされることが望まれます。しかし実際には、「育てるつもりだった」「成長してほしくて厳しく言った」という思いが、相手には威圧や支配として受け止められてしまうことがあります。

これは単に言い方の問題だけではなく、“人を導くとはどういうことか”という本人の理解のあり方と関係している場合があります。とくに、エリクソンがいう「世代性」が建設的に働かないとき、育成や指導が、相手の成長を支える関わりではなく、自分の価値観を押しつける関わりになってしまうことがあります。

「悪意があったか」だけでは、
支援の糸口は見つかりません

ハラスメント個別研修の現場では、「そんなつもりはなかった」「本気で良かれと思っていた」という言葉がよく聞かれます。もちろん、それで問題がなくなるわけではありません。しかし一方で、支援の場では、悪意の有無だけで相手を理解しようとしても不十分です。

 

大切なのは、その人がどのような価値観で人と関わってきたのか、なぜその関わり方が当然だと思われているのか、どこで相手との認識のずれが生じているのかを丁寧に見ていくことです。発達心理学の視点は、こうした整理を行う際に、相手を一面的に決めつけずに理解するための助けになります。

個別研修では、まず「整理する」ことから始めます

人事ラボラトリーのハラスメント個別研修では、最初から一方的に反省や改善を求めるのではなく、まず初回面談の前半でカウンセリングを実施し、受講者の方の状況や気持ち、出来事の受け止め方を丁寧に整理します。

そのうえで、必要に応じて、コミュニケーションの取り方、感情の扱い方、相手への伝え方、指導と配慮のバランスなどを、マンツーマンで学んでいただきます。これは、単なる知識提供ではなく、本人の認識と行動の両方に働きかけるためのプロセスです。

発達心理学の視点は、「責任を軽くするため」ではなく、「変化を促すため」に用います

ここで大切なのは、発達心理学を使って問題行動を正当化することではありません。背景を理解するのは、「仕方がなかった」と結論づけるためではなく、なぜ同じような言動が起きるのかを見極め、より実効的な改善につなげるためです。

 

表面的な注意だけでは、人はなかなか変わりません。自分の受け止め方や関わり方の傾向に気づき、相手への影響を理解し、別の対応を実際に選べるようになることが、再発防止には欠かせません。

だからこそ、集合研修ではなく
個別研修が必要になることがあります

全体研修は、組織方針や基礎知識の共有には有効です。しかし、実際に問題のあった本人が、自分の対人傾向や思考の癖を見直し、具体的な行動の変化につなげていくには、一人ひとりに合わせた個別の対話が必要になる場面があります。

 

ハラスメント個別研修は、「何をしてはいけないか」を伝えるだけの場ではありません。相手に与えた影響を理解し、自分の関わり方を見つめ直し、今後のよりよい行動へとつなげていくための場です。発達心理学の視点は、その対話をより深く、実践的なものにするための一つの支えになります。

対話から、職場を変えていくために

職場の問題は、制度だけでは解決しきれないことがあります。だからこそ、本人の内面の理解と、実際の行動変容の両方に働きかける支援が必要です。

 

人事ラボラトリーは、これからも「対話から、職場を変えていく。」という想いのもと、ハラスメント個別研修を通じて、働く人と組織の双方にとってよりよい変化を支えてまいります。

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