ハラスメント防止のために全構成員向け研修を行うことは、組織としての方針周知や基礎知識の底上げという意味で重要です。
ですが、実際のハラスメントや再発のリスクを生みやすいのは、組織全体というより、問題のある言動を繰り返しやすい特定の個人であることが少なくありません。
厚生労働省も、事業主に求められる措置として、単なる周知・啓発にとどまらず、相談後の事実確認、行為者への適正な対処、そして再発防止措置を明示しています。つまり、組織にとって本当に重要なのは、「全員に同じ話をすること」だけではなく、リスクの発生源に直接働きかけることです。
一般的な全構成員研修は、何がハラスメントに当たるかを知ってもらうには有効です。
一方で、画一的なハラスメント研修は知識の向上には役立っても、行動変容やハラスメントの減少を十分に実証できていないとの指摘もあります。具体的なケースの対応方法を解説した研修であったとしても、ひとつのやり方が必ずしも全員に通用するわけではないのです。
ハラスメントの当事者や、ハラスメントとまでは認定されなくても、威圧的・高圧的・侮辱的・境界感覚の弱い言動をしがちな対象者には、一般論の講義だけでは響かないことが少なくありません。なぜなら、必要なのは制度説明ではなく、ご本人の思考の癖、感情の扱い方、相手の受け止めへの想像力不足、立場認識の甘さ、指導方法の偏りといった、個別の原因に踏み込んだ修正だからです。
効果的な研修は職場や対象者の実情に合わせて設計されることが望ましいといえるでしょう。
行為者本人には、「自分は指導しただけだ」「冗談のつもりだった」「相手が弱すぎる」といった自己正当化が存在することが多くあります。全構成員向けの研修では、こうした個別の認知のゆがみや反発に対応できません。マンツーマン研修であれば、本人の言動事例をもとに、どこが問題だったのか、なぜ相手にダメージを与えたのか、今後どう言い換え・言い換え行動をすべきかまで具体的に落とし込むことができます。
毎年、全構成員にハラスメント研修を実施する方法は、組織全体の最低限の共通理解を維持するには適しています。しかし、すでにリスク兆候が見えている対象者に対して何もせず、全体向け施策だけに予算を投じ続けても、実害の予防・再発防止という観点では費用対効果が薄くなりがちです。
厚生労働省の令和5年度調査では、企業の64.2%が過去3年間にパワハラ相談を受けており、対策上の最大の課題として59.6%が「ハラスメントかどうかの判断が難しい」と答えています。だからこそ、認定後の行為者だけでなく、認定前の“問題行動を起こしがちな人”に早期介入する個別研修は、現実的で有効な投資になります。
人事ラボラトリーが提案するのは、全構成員向け研修を完全になくすことではありません。組織には周知・啓発が必要ですし、組織文化づくりの観点でも基礎施策は欠かせません。ですが、実際の防止効果を高めたいのであれば、全組織一律の啓発を“土台”としながら、再発リスクの高い対象者へのマンツーマン個別研修に予算の重心を移すことが重要です。ハラスメント対策は、「全員に同じ話をすること」で完結するものではなく、起きやすい人に、起きない行動を身につけさせることまでやって初めて実効性を持ちます。
人事ラボラトリーのマンツーマン個別研修は、ハラスメント行為者、行為者とまでは認定されていないものの問題のある言動が見られる社員・職員・教職員の方、指導方法に課題を抱える管理職などを対象に、本人の言動特性に合わせて内容を個別設計します。一般論の理解にとどまらず、認知の修正、対人コミュニケーションの再学習、感情コントロール、具体的な言い換え・対応練習まで踏み込み、現場で再発しないための実践的な行動変容を支援します。